葛とお葛かけ(おくつかけ)

 

 春や秋のお彼岸や、お盆、法事など人が集まる時に作られる東北の郷土料理で、精進料理のお葛かけを紹介したいと思います。

 

 出し汁は、昆布と干し椎茸を水で戻したものを使います。

具は野菜が中心です。里芋、人参、キクラゲ、椎茸はそれぞれ1センチ角に切り、出し汁と一緒に大きめの鍋に入れ、あくを取りながら煮ます。

 里芋がやわらかくなったら、水で戻した豆麩と短く切ったしらたきも加えます。一煮立ちしたら、日本酒、塩、しょうゆで味を調え、水炊きした葛粉(なければ片栗粉)でとろみをつけます。

 お椀に盛って、三つ葉を散らしたら出来上がりです。

 

 野菜たっぷりのうまみに、キクラゲのコリコリした歯触りがアクセントになり、何杯でもお代わりしたくなる味です。野菜はこの他にも季節のものをお好みで入れてみてください。

 夏に、ナスや冬瓜、大きくなってしまったキュウリなどを、出し汁で柔らかく煮て、豆腐や好きな茸を加えます。これもやはり葛でとろみを付け、生姜の磨り下ろしたものや、三つ葉、柚子などを吸い口にして頂くのが大好きです。

 とろみは、夏はあっさりと薄く、冬は濃いめに付けて体を温めたりと、変化を付けます。どなたの体にもやさしい味です。

 

 子どもの頃、風邪を引いたり、お腹をこわした時、よく母に葛湯を作ってもらったのを思い出します。葛粉とお砂糖を水で溶いて煮る、ほのかに甘い飲み物です。

 

 そして母の晩年、食欲のない時や、胃腸の調子の良くない時、今度は私が母に、葛で作る簡単な料理を作っていました。

 蕎麦つゆを少し薄めただけの簡単な出汁で、絹ごし豆腐をコトコトと煮ます。豆腐に火が通ったら、水で溶いた葛でとろみを付けるだけです。最後に生姜の磨り下ろしをたっぷりと載せます。

 これだけなのですが、母にとても喜ばれたのを思い出します。

 

 赤ちゃんからお年寄りまで、そして体調の悪い時にも、私達の体にトロリと優しく寄り添ってくれるような葛の汁物は本当にありがたい一品です。