甘くない煮物のこと

 

 昆布の他にも、ワカメ、メカブ、ひじき、天草、海苔など、海藻は栄養価に富んだ優れた食品であることはご存じだと思います。料理上手の実家の母がよく作ってくれたひじきの煮物は、油揚げや人参の細切りがはいっていて甘辛く、箸休め程度の量しか食べない、まさに東京のお惣菜、という感じのものでした。

 

 ところが結婚したばかりの頃、姑が作ってくれたそれは、まったくお砂糖の入っていない、これまで慣れ親しんだ味とは似ても似つかないものでした。

 

 大正生まれにも関わらず西洋風が大好きで、ちょっとした英会話まで出来た義母は、煮物も、お砂糖を入れない西洋風の作り方を好んでいたのでした。作り方は簡単です。

 

 乾燥ひじき一つかみは、さっと洗って30分位水に浸けておきます。しらたき一袋はさっと茹でて、ざるに上げておき、5センチ位にきっておきます。長いひじきの場合、それもしらたきと同じ長さに切ります。鍋に、ひじきとしらたき、水1カップ、煮干し5~6匹を入れて火にかけ、酒大さじ1、しょうゆ大さじ3を加えてコトコト10分位煮て、火を止めてふたをしたまま味を馴染ませます。

 

 春になると沢山出てくる、ふきの煮物も、やはり甘くありませんでした。その前に、まずふきのとうが出てきますが、これもやはり味噌とお酢だけであえる、甘くない酢味噌あえにして頂きます。

 煮物はまず皮をむいてから5センチ位に切って下茹でします。生のまま皮をむくと手が黒くなってしまうので、私はゴム手袋をはめます。ちょっと一手間かかりますが、こうする方が、ふきが茶色に変色するのを防げるのです。

 その後の作り方と味付けの分量は、ひじきの煮物と全く一緒です。

 ふきのほろ苦さがちゃんと残ってくれて、何ともいえず癖になる味です。砂糖抜きの分、カロリーも控えめで、たっぷり食べられ、あっさりしていますから、この甘くない煮物に慣れると、甘い煮物をちょっとくどく感じてしまうほどです。

 

 でもどうか食べすぎには注意してくださいね。美味しくてついあとを引くので、主人といつも、もうこれでやめようね、と言いながら食べていますから。