アップルパイのこと

 

 信州の安曇野の里から、いつも季節の果物や、野菜を送って頂きます。自家栽培の地粉も挽いてくださるので、私のパンを焼くとき、粉の1割に加えています。

 

 その方のお友達が、丹精込めて作っていらっしゃる紅玉りんごを毎年送っていただいています。

 大粒の真っ赤なりんごは、子供の頃の懐かしい香りがします。甘酸っぱい紅玉は、アップルパイにぴったりです。

 二、三年前までは、りんごの皮をむいて、煮ていましたが、無農薬りんごのあまりの美味しさに、皮をむくのはもったいないと、思い切って皮ごと使ってみたところ、中の実にもほんのり美しい赤い色が付き、それがとてもきれいな上、皮の食感も気に入り、以来、私のアップルパイは、皮ごと煮た赤いりんごで作っています。

 

 お蔭様で、ひと手間省けた作り方は、いたって簡単です。

 

 りんごは四等分にカットして芯を取り、さらに大きめに横にカットします。

色が変わらないうちに、レモン汁1個分をかけ、砂糖を加え、ふたをして火にかけます。始めは弱火でリンゴの水分を出します。

 少し水気が出てきたら強火にして、りんごにすっかり火が通ったらふたを取ります。今度は水分を飛ばし、一気に煮上げます。

 りんごがあまり柔らかくなりすぎないよう、意外なことに、フライパンなどで煮ると早くてよいのです。形がしっかり残った状態で、お皿などにあけ、しっかり冷ましておきます。

 りんごをバターで炒めて作るやり方もありますが、私はあっさりしたのが好きなので、このやり方で作り続けています。

 

 パイの生地も、一昔前までは気を使うデリケートな作業だったのですが、今ではスピードカッターにかけて、あっという間に作ってしまいます。

 

 薄力粉300グラムに、冷たい有塩バター200グラムを1センチ角にカットしたものを加え、スピードカッターにかけてスイッチオン。

 1分位でホロホロしてきますから、一旦止めて、水150㏄くらいを加えて、またちょっとだけ回します。ひとまとまりになったら取り出して、強力粉で打ち粉をしながら薄くのしていきます。

 長方形にカットして天板に並べます。シナモンを薄く振りかけ、りんごをのせて、網の目になるカッターでカットしたふたの部分をかぶせます。溶き卵を塗り、200℃のオーブンで30分ほど焼けば出来上がりです。

 

 私のアップルパイ作りの歴史(?)は古く、まだ学生時代に友人から習ったのが一番初めでした。

 その時とても感動し、こんな素敵なお菓子が上手に作れて、お友達にもプレゼント出来たらいいなと思い、いろいろ工夫しながら改良を続けてきました。以来気が付けばもう40年以上も作り続けてきたことになります。

 

 アップルパイの魅力はすごいと、いつも思っています。

 作る時のわくわくする楽しみ。オーブンから立ち上がってくるバターの香り。黄金色に焼き上がった時の、甘くて香ばしい香り。熱々のパイをフウフウ言いながら食べる時の、サクサクとした食感と、甘酸っぱいりんごの風味。すっかり冷めてからの、味の落ち着いたしっとりした感じ。

 

 本当に大好きなケーキです。

どなたにプレゼントしても喜んでいただけること、請け合い!ではないでしょうか。